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◇ 歯科技工教育学士課程移行記念特別座談会 “「4大化」によって現場はどう変わるのか?” |
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III これからの歯科技工と教育 |
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山口 患者さんが身近にいる環境ということでは、1人の患者さんを囲んで「カンファレンス」ができるような教育システムも必要だと思います。
吉澤 「この大学で、4年間で何ができるのか」。医科歯科ならではの歯科技工教育をやって欲しいですね。
山口 その延長ですが医科歯科というのは「医科」と「歯科」、歯学部に限らず医学部もあるわけです。確かにすでに「口腔保健工学」という名前が付いていますが、一人一人の生体にあわせてオーダーメイドの人工物を作れる職種として、いずれ医科とも繋がりを持って研究できる環境の場ができればいいとも思うんですが。
佐野 医科との繋がりができることによって、歯科技工にどのような発展が考えられるでしょうか?
池田 例えば卒業時に技工士免許だけではなく、何か医科と絡めるような免許を取得することができればという話もあり、課題としてはあります。
山口 「いかにも、医科!」…ちょっと駄洒落になってしまいましたが(笑) 医科という分野は当分先だとしても、身近なところから口腔内を扱うという工学専攻としての掴み方があるんじゃないのかなと思いますが。咬合プロテクターの拡大も1つの提案なのですが、今問題になっているブラキシズムというのも色々な原因があるでしょう。例えば妊婦さんが出産するときに随分クレンチングをするという問題に、出産するときだけの咬合プロテクターとしてのスプリントを作るというアイデアなども身近にあるわけです。
佐野 確かに、睡眠時無呼吸に関しては耳鼻科との連携をしてやっている大学もありますしね、スプリントとか使って。良いことですよね。
山口 「再生」とともに「造成」の分野も大いに発展するでしょうから、CAD/CAMや3D プリンターの技術や知識の応用から歯科に限らず一品一様の生体へのダイレクトマテリアルの加工を望まれる時代は必ず来るだろうと思うんですけどね。
吉澤 CAD/CAMで思い出しましたが、機械の話に戻ってまずはそれに振り回されず使いこなせることは大事だね。使いこなすためには色々な知識や経験が必要だと思う。生体の動きも知らなければいけないし、咬合でも何故この場所で接触させるかということを知らなければ、CAD/CAMのデータにある天然歯の見本を当てはめただけでは本当の理解にはならない。そういうソフトの部分を考慮するのは結局「人間」だから。絶対に。
石松 基本的にまず目的意識を持ってモノを作れる人でないといけないですよね。
佐野 となると作るノウハウを知る人材を育てつつ、それに立脚した視点の広い人材を育てるということですか。ハードル高いですね(笑)
吉澤 石松さんの出身校である広島大学の歯科技工士学校は、国内で先駆けて4年制大学になりましたが、卒業生は望み通りの方向に進まれているのですか?
石松 就職状況を聞くと歯科技工士になっていないという方もいるようです。ただ広島大学のHPを見ますと、現在では「バイオデンタル教育」というものがあって、歯学部と口腔保健と工学部とが一緒に勉強する期間があるようです。これは参考にしても良いかもしれませんね。
池田 こういう良い所は参考にして、どんどんまねていくべきだと思いますね。
山口 同じようにもっと拡大していくと、学内だけでなく、例えば文科省や厚労省、メーカーや研究者など、垣根を越えたオープンな交流場所というのが大学に欲しいような気がしますね。それは4年制の大学が出来上がったゆえに。すでに遠い昔に卒業した僕らにとっても…
石松 古い技工士か(笑)
山口 古い技工士のままで良いのかっていう問題もありますし、そういう場に顔を出すことによってさらに新しい発展を見せることができる。新しい人たちにとっては私たちの過去の経験を共有できるメリットもあるでしょう。そしてまた産学の人たちが手を取り合って一緒に研究をする、そういうような教育システムが欲しいですね。
佐野 現場とのつながりという点では、オープンな場といういうのはひとつのポイントかもしれないですね。単に私たちが必要とする人材を要求するだけではなく、私たち自身も成長できる機会になるという。
山口 聞きかじりで申し訳ありませんが、例えば人工股関節もチタンや酸化ジルコニウムが使用され、大腿骨側のパーツは髄腔に挿入するらしいのですが、形態的には「メタルコア」を入れるのとよく似てるんですね。僕らが知っている歯根破折防止のための「フェルール効果の付与」や「既製ポストのスリットコア」といった知識が違う専門職の方からみると「それは応用できそう」ということもあるかもしれないわけです。もちろん同じ土俵で最低限の話ができるというのが大前提としてあるわけですけども、臆せず自分たちの知識を整理して話ができたら魅力的です。
佐野 吉澤さんはどうですか?
吉澤 臨床の現場で活躍する技工士だけじゃない道もあると思います。CAD/CAM一つをとっても、もっと優れた国産のものがあって欲しいと思います。日本を育てるという方向性でも。
山口 「日本オリジナル」ということに関して石松さんはどうですか? これもキーワードだと思うのですが。
石松 私もオリンパスと過去に共同研究に携わったことがありまして、あの時はOCCというキャスタブルのガラスの研究でしたが今から思えばちょっと早世の感がありました。しかしメーカーとタイアップして意見を述べ、それがかたちになっていく達成感はありました。こういう環境を大学がバインダーとなってやれるとすごく良いと思いますね。
山口 今、原発の問題が盛んに騒がれていておそらくこれから省電力化の声も当然出てくるでしょう。世界的にも日本の動向を見守っていますよね。と考えればこれを逆に好機と捉え、例えば1つのクラウンを作るのに最初のワックスアップ、印象から始めても良いですけど、カロリー計算をきちんとしていって「プリウスのようなクラウン(笑)を作る」というのは社会的にも意義があるでしょうし、日本がオリジナリティーを持ってアジアから世界に向けてリーダーシップをとれる分野かもしれませんよ。
佐野 エコロジカルクラウン!!(笑) さていろいろな可能性が提起されましたが、現時点での皆さん方の「現場での対応」としてはどうしていきたいかというものはありますか?
石松 優秀な技工士さんが務めてくれるのであれば、ウェルカムです。(笑) その中でどう「共存」するかを考えられれば一番良いと思うんですね。逆に我々古い人間は若い人たちを支えてあげて、そういう人たちが活躍できるような環境を作ってあげるという考え方が一番良いと思うのです。「踏まなければならない」経験と「踏まえて進む」経験の話が先ほど出ましたが、すべてを私たちと同じ轍を踏む必要はなく、もしそうであったら進歩はありえない。ただ、そこまでの体力があるかどうかは分からないですけども(笑)
吉澤 適合にしてもCAD/CAMは前より良くなったといわれていますが、どのレベルがいいのかを知っている人間は必要です。他にも例えばカービング大会ってありますよね? あれはそれなりにそれらしい歯を作るんだけど、かたちの中に「どういう意味」があるか? 咬合接触と溝の流れの関係とかね、そういう知識をもとに更なる技術で「アレンジ」がされるべきでしょう。
佐野 吉澤さんはご自身のセミナーもやられていますが、その背景には若手の基礎力を育てたいと…
吉澤 とにかくもう基礎力! 審美と言っても5年10年先なんか天然歯は色変わっちゃうんだから(笑)
石松 基本的には機能、そこがベースなのは皆さん同意見ですね。
佐野 こういう現場のことを伝えられる方というのは、4年制大学になっても絶対に必要だと思いますね。その他いかがですか?
山口 技工士はどちらかというと卒業してからすぐの「初速」が大事なんですよ。現場ではいきなりトップギアに入ることが望まれる職種ですし結果も望まれる。そう考えていくと明らかに40 才前の人たちにどんどん活躍して欲しい。現代っ子は「テレビ世代」と違い「インターネット世代」なので双方向の感性をすごく持っている。講演会で美しい完成物を眺めるのもいいですが身近な症例にリアリティーを感じ、同世代でスタディーグループを組んで勉強しあう姿はむしろ昔に回帰している気もします。
吉澤 インターネットの世界だけでそれを構築するのは危険ですけどね。
池田 吉澤さんが危惧されているように、そういう環境で育ってきたにもかかわらず、良い方向に行かない場合もあるんですね。例えば会社に出勤したとき、上司がそぐそばにいるのにメールで挨拶するとか…(笑)
吉澤 発想や道具も大事だと思うんだけれども、基本的には患者さんを目の前に相手するわけだからそっちのほうも勉強しておいて欲しいっていうことなんだよね。ちょっと古い人間の意見も残しておいて欲しいなっていうね(笑)
佐野 実際この先がどうなってくるのかわからないことも多いと思いますが、「変わっている」というのは事実だと思うのです。先ほどのマネジメントスタイルの三角形ではありませんが、これまでのコミュニケーションと新しいコミュニケーションが螺旋状に繋がっているのかもしれません。その移行期であり、その「きっかけ」が4大化にあればいいなと私自身は思います。結局そこに必要なのは「繋がり」です。「私たちの世代」「上の世代」そして「これからの世代」に繋がりが無いと、せっかくのカリキュラムも分断されてしまうかもしれません。学術部として、というか私の個人的な考えでは、同窓会の定例行事としてカービング合宿をOBと学生でやってみたりですとか…
山口 そこまで戻ったか(笑) |
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