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◇ 歯科技工教育学士課程移行記念特別座談会
“「4大化」によって現場はどう変わるのか?”

 

I 4大化について思うこと

 
佐野 さっそく座談会を始めたいと思います。4大化によって現場はどう変わると考えているのか? どう対応しようと考えているのか? 皆さんのお考えを伺いたいと思いますが、まず最初に、これまでの簡単な経緯を池田先生からお願いいたします。

池田 池田 4年制に改組されるまでには過去にも様々な取り組みがなされてきましたが、最近の経緯としましては、1年間半ほど前に大山学長の指揮のもと、教育担当理事の須田先生、田上歯学部長、前学校長の三浦教授といった学内の主立ったメンバーで構成される歯科技工士学校教育高度化推進検討部会ができ、カリキュラムや教育の方針などの検討をしてまいりました。そこで検討された内容を文科省に提出しスタートに至っています。「東京医科歯科大学はアジア、あるいは世界の歯科医学教育の拠点にならなければいけない。」と日頃から学長、歯学部長はおっしゃっています。簡単にいうと一流を育成していく、技術か知識かあるいはなにか他のものかもしれませんが、そういった人材を育成出来る授業内容にしていこうと検討しています。

佐野 今の話を聞きますと、4大化によって輩出する技工士像は、広い視点を持った人間ということになってきますね。

山口 大学化の目的としては現場で即戦力として活躍できる人材を育てたい、あるいは教育、研究のような分野で活躍出来る人材を育てたいということが挙げられるでしょう。現場で活躍出来る人材をといったことになると、おそらく従来の技工士学校が4年制になったというようなものではない気がします。ただ、現場というのは知識よりも経験優先の世界ですよね。教育がどんどん進んでいって高度化していったとしても、大学を卒業した人間が優遇されるのかといえば、どうもすべてでそうはならない。大学に入学する人間はどこを魅力に感じるのかを明確にしておくべきでしょう。

吉澤 歯科技工はテクニックさえもっていれば、生き抜いていけるだけの面白さ、やりがいがたくさんありますが、そのために学ぶべき知識や習得すべき高度な技術は、今の時代には、ありすぎるくらいある。

池田 4年制になった背景としてそれもあります。国家試験を合格するレベルであれば今までどおりの授業時間でよいと思います。しかし、時代のニーズの高まりに対応するために、インプラントやCAD/CAM、あるいはレントゲンを観察できる知識などを詰め込んでいくとこれまでの授業時間では到底足りません。

吉澤 即現場で働きたいと思う方は、従来の2年制の専門学校に入学されるかもしれません。ですから、4年の教育期間を経て国家試験を受ける方々は、それとは違う考えを持っていると思います。しかし有名大学の受験率が高い理由には、「学位が欲しい」あるいは「大学のネームバリューが欲しい」という考えも当然あるわけですよ。

佐野 確かに、看板というのも魅力の一つになりますよね(笑)

吉澤 歯科技工の持つ医療の喜びや技術習得の達成感を味わうには、4年間では難しいかもしれない。ですから他業種も含め、メーカーだとか研究開発などに進む方も増えてくる。どういう方向性にしても、初年度の卒業生を社会に送り出すときが一番ポイントだと思いますね。その後の傾向を左右しますからね。

石松 4年制大学化について私が考えるのは、今までの技工士学校の考え方の延長上にあるいうのはすごくつまらない気がしています。職人を育てる学校というよりは、もう少し違う観点で世界に通用するような人材を養成をすべきだと思います。歯科医療業界に関係した社会に向かってプラスになることができる人間、大勢を見ることができるそういう人材がエリートだと思います。だから、技工現場に合わせてカリキュラムを組むよりも、「今のこういう状況を自分たちが変えよう!」といった学生が育って欲しいと思います。

池田 技工技術や材料の研究者、教育者などの人材とともに、行政・法律に関わる人材を育てることは重要度として高いですよね。将来10年、20年後に卒業生がそれらに関わって、ある一定の地位を築いたときに業界も自然と変わるのではないかと思います。

石松 石松 それから、歯科技工士は歯科医師のもと徒弟制度の延長の立場にいたわけですが、4年制大学教育によって独立した専門技術職としての確立がさらに促進されるのではないかと思います。それぞれの意見を持ってお互いに連携しながら1人の患者さんを治療するスタイルが出来る。そのベースとなる歯科技工教育ができるものと大変期待しています。

佐野 大学の中でコ・デンタルとしての位置づけはどうなっていますか?

池田 当然位置づけは確立されています。先ほどの行政・研究、あるいは指導者にプラス、臨床現場にたち活躍できる技工士も育成しなければなりません。そのために我が大学は良い環境が整っています。歯学科や口腔保健衛生学専攻の学生と一緒に授業を受けたり臨床に携わることで、今よりも歯科技工士の位置づけは明確になっていくのではないかと期待しております。

佐野 卒後すぐに現場で活躍できる人材と中長期的な視点で社会を変える人材と、どちらにしても学生にそうしたビジョンを持たせる必要があるということですね?

池田 そこですね。これからの課題なのですがどの段階で学生にそれを示していくかなんです。現在の本科、実習科生が補綴に進むべきか矯正に進むべきか悩むのと同じで、どのような道を選ぶのかは時期やタイミングもそうですが結局は学生次第なんです。

佐野 となると、業界としてはどういったビジョンを持ったらいいのか?という話にもつながりますが。

山口 単純に現場の観点から望まれるのはとにかくグッドジョブ&スピーディーな人が一番いいわけですが、それすら現状では難しいわけです。それを変えるには、新材料や新技術の習得に伴って効率性の向上も検討したり、業界の仕組みに対する新しい発想をもって、リーダーシップを発揮できる人間が育つ必要があると思うのです。

池田 そうですね。長時間かければ良いものはできると考えがちですが、それが経済性を伴っていない仕事しかできないような人材は育てたくないですね。一般的な芸術品と違って補綴物には材料や加工法に規制があるように、経済性にも規制があることを教える必要はありますし、それをどう捉えるかといったところまで示すことも考えなくてはいけません。

吉澤 しかし早い時期でのそれは、一歩間違えると医療人として夢をなくす可能性が出てきませんか。現場逃避を生むというか。ですからそこに夢と希望を与えながら段階的に教えていく必要はありますよね。

石松 池田さんが最初に言った「医科歯科大学はアジア、世界の拠点でなければならない」というのがあるならば、まさに考え方や発想を変えていかなければならないということかとも思います。

池田 そうです。変えていかなければならない訳です。例えばクラウン1つ作るにしても、従来のインスツルメント一辺倒でというやり方だけでもないはずです。

石松 もしグローバル化して世界を見据えてといった人材であれば、世界基準も視野に入れた考えた方も必要かもしれません。世界のシステム、世界の経済体系、つまり枠に捕らわれない活躍をしようという考え方も。

池田 世界で通用する人材が育つと逆に、財産が海外に流出する可能性もあるので、これはこれで怒られちゃわないですか?(笑)

石松 でもそういった人材がマクロの視点からミクロの視点に、それこそ現状を変えられる人材になってくれるんじゃないですかね。

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